急速冷却機(ブラストチラー)の容量表示は「kg/サイクル」で示されますが、単なる収納量ではなく温度条件と時間を含んだ性能値です。本記事では容量表示の読み解き方から、必要容量の算出方法、段数やトレイ規格の影響、実効容量を高める運用の工夫までを解説し、厨房の規模やメニューに適したな機種選定のポイントを整理します。
容量は「何kgを何分で、何℃から何℃まで下げられるか」を示す性能指標です。庫内容量(L)の“入る大きさ”とは別物で、危険温度帯をどれだけ速く通過させられるかを表します。多くの表示は水負荷や特定トレイ条件で評価されており、実食材では形状や粘度、盛り付け厚みで結果が変わります。チル(例:70→3℃)とフリーズ(例:90→−18℃)では必要な除熱量が異なるため、同じ機種でも容量値は変動します。比較する際は“kg”の数字だけでなく、初期温度・目標温度・時間の三点セットとして読むことが大切です。
たとえば「30kg/90分(70→3℃)」は、基準トレイに均一に広げた負荷を90分以内に中心3℃へ冷却できる目安です。評価条件が「90→3℃」や「90→−18℃」に変われば数値は下がりますし、段数やトレイ規格が違えば段あたりの積載も変わります。現場では自店のトレイ深さ・製品厚み・盛り付け方法を前提に、表示値に安全係数をかけて読み替えると実態に近づきます。試作で芯温プローブを用い、段あたりの“自店係数”を決めておくと、容量設計の精度が上がります。
食中毒リスクが高まる危険温度帯(一般に10〜60℃付近)は、短時間で通過させることが求められます。急速冷却機(ブラストチラー)はこの“速さ”を確保するための装置であり、容量選定も「何kg載るか」ではなく「規定時間内に危険温度帯を抜けられるか」を基準にします。加えて、冷却開始・終了の温度と時刻を記録化し、管理基準に合致しているかを日々検証する運用が重要です。
まず日次仕込み量から、ブラストチル対象の合計重量を抽出します。次に自店のトレイ規格と許容装填厚みから、1段あたりの実用装填量を決め、段数と掛け合わせて1バッチ重量を算出します。日次仕込み量を1バッチ重量で割れば必要サイクル数が出ますが、入替えや扉開放などのロスを見込み、2〜3割のバッファを足しておくと運用破綻を防げます。水負荷基準の表示は実食材で過大評価になりやすいため、試作で補正する前提で計算します。
平均ではなくピーク時に合わせて余裕率を設定します。同時間帯に集中するメニューの総重量を基準に、規定時間内で危険温度帯を抜けられるかを検証します。オーバーしそうなら、小分けでバッチ分割、浅広配置や風量強化で実効を稼ぐか、ワンサイズ上の機種やサテライト用の小型機を追加します。フリーズはサイクルが長く他工程を圧迫しやすいため、時間帯を分離する運用設計も有効です。
主流のGN1/1(約530×325mm)やベーカリー用600×400は、段間ピッチやトレイ深さの違いで冷却効率が変わります。段間が狭ければ積載枚数は増えますが、空気の抜けが悪いと冷却が鈍化します。深いパンや山盛りは芯温降下が遅く、表示容量どおり進みません。導入前に自店のトレイ規格と互換性、段間の余裕、出し入れ動線を確認し、浅広に均一へ広げられるセッティングを確保すると安定します。
容量の素早い概算は「段数×段あたり標準装填量」で行いますが、これは均一負荷を前提とした目安です。粘性が高いソース類や具材が大きい煮込みは、厚みが数ミリ増えるだけで芯温降下が急に遅れます。満段運転では庫内の放熱密度が上がり能力が落ちやすいため、表示値から1〜2割控えめに見ると安全です。代表メニューで段あたりの実効量を測定し、計画値に反映させることが実務上の近道です。
小分けと浅広配置は表面積を増やし熱抵抗を減らすため、同じ段数でも冷却速度が向上します。風量や風向モードが選べる機種では、厚物は強風、繊細品は弱風など食材に合わせて使い分けます。導入直後にトレイ深さと風量設定の組み合わせを試し、代表メニューで芯温推移を測定して標準手順書に落とすと、担当者が変わっても再現性の高い冷却が実現します。容器や下地の材質、製品の並べ方を一定に保つこともバラつき低減に有効です。
扉開閉は実効容量を大きく削ります。投入はまとめて行い、芯温プローブで進捗を確認して無用な開閉を避けます。自動ログやデータ出力に対応した機種を選ぶと、冷却記録の手間が減り、能力低下や運用ミスの早期発見にも役立ちます。ログに基づく是正と予防のサイクルを回すことで、同じ設備でも安定して高い処理量を引き出せます。
カタログのkg/サイクルは、初期温度・目標温度・時間・基準トレイの条件付きです。70℃始まりか90℃始まりか、目標が3℃か−18℃かで数字の意味は大きく変わります。評価媒体が水負荷か実食材かも必ず確認し、必要なら自店食材での検証を前提に比較します。
庫内容量(L)は収納力、処理量(kg/サイクル)は除熱速度です。同じLでも風路設計やユニット能力で処理量は変わります。比較時はL、段数、基準トレイ、温度・時間条件付き処理量を分けて見て、自店のメニューと工程に適合するかで判断します。
最終判断は代表メニューでの現場テストが有効です。トレイ深さや風量モードを変えて芯温推移を測定し、運用時の実効を掴みます。周囲温度や換気、クリアランス、排水、電源・ブレーカー容量、搬入経路など据付条件を満たせないと能力が出ません。設置直後の試運転とログ取得をルーチン化すると立ち上がりがスムーズです。
容量は「kg/サイクル」という数字と温度・時間条件の組み合わせで読み解き、危険温度帯を速やかに通過できるかを基準に選定します。日次仕込みからバッチとサイクル数を逆算し、ピーク時の余裕を確保します。段数やトレイ規格、装填厚みは実効に直結するため、浅広配置と風量最適化、扉開閉の最小化、ログ運用で“同じ機械でも強い現場”を実現します。最後は現場テストと据付条件の整備で、カタログ値を自店の生産性に翻訳します。
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製品名 | 3Dフリーザー (KOGASUN(旧:古賀産業)) |
プロトン凍結 (菱豊フリーズシステムズ) |
トンネルフリーザー (タカハシガリレイ) |
リジョイスフリーザー (米田工機) |
凍眠 (テクニカン) |
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問い合わせ先 |
![]() 引用元HP:KOGASUN(旧:古賀産業) 公式 |
![]() 引用元HP:菱豊フリーズシステムズ 公式 |
![]() 引用元HP:タカハシガリレイ 公式 |
![]() 引用元HP:米田工機 公式 |
![]() 引用元HP:テクニカン 公式 |
冷凍能力 | 8~500㎏/1時間 | 3~300kg/1時間 | ※WEB上に情報なし | 1.5~100㎏/1時間 | 15~650kg/1時間 |
導入事例 | 41件 | 10件 | 17件 | 28件 | 22件 |
設立 | 1969年 | 1999年 | 1960年 | 1973年 | 1988年 |
事例ありの 冷凍可能な食材 |
魚・魚加工/肉・肉加工/菓子/惣菜/パン/麺 | 魚・魚加工/肉・肉加工/惣菜 | 魚・魚加工/肉・肉加工/パン | 魚・魚加工/肉・肉加工/惣菜/麺 | 魚・魚加工/肉・肉加工/惣菜/麺 |
選定基準:2024年11月12日時点Google検索で100位まで検索した急速冷凍機26社のうち導入事例が多いメーカー5社をピックアップしました。