調理現場では、食中毒を防ぐために「安全な温度帯」へ早く食品を移行することが極めて重要です。たとえば煮物やスープなどは加熱後も高温状態が続くと、菌が増殖しやすい温度帯に長くとどまることになるため、急速に冷却することが推奨されます。そこで活躍するのが「急速冷却機(ブラストチラー)」と「タンブルチラー」です。両者は食品を適切な温度まで下げる機能を持ちますが、冷却方法や得意とする食品の種類に違いがあります。ここからは、それぞれの仕組みや特徴、導入時のポイントなどを詳しくみていきましょう。
急速冷却機、あるいはブラストチラーと呼ばれる機器は、その名の通り非常に強い冷風を食品に直接吹きかけることで短時間で温度を下げる仕組みを備えています。食材の表面から中心部まで、均一かつ迅速に冷却することが求められるため、大型のファンや独自の冷却回路などが搭載されています。
加熱直後の食品を通常の冷蔵庫に入れた場合、冷蔵庫内の温度が上がってしまい、ほかの食品に影響を与える可能性があります。一方、ブラストチラーは食品の中心温度を短時間で安全な温度領域まで引き下げるため、細菌増殖のリスクが大幅に減ります。また、急激な冷却によって食品中の水分蒸発を抑えられ、調理後の風味を損なわないメリットもあります。
レストランやホテルの大量調理、食品工場など幅広い現場で利用されるのがブラストチラーの特徴です。たとえば、前日に仕込んだ料理を一度加熱し、急速冷却して翌日に再加熱する「クックチル方式」は、作業工程を合理化しながら安全性を保てるとして注目されています。こうした調理システムを運用する際には、強力かつスピーディに冷やせるブラストチラーが欠かせません。
急速冷却機はファンや冷却ユニットをフル稼働させるため、電気代などのランニングコストはどうしてもかさみがちです。また、高温の食品を庫内へ入れるときは、ある程度熱を逃がしてから投入するといった運用上の工夫が必要な場合もあります。機器内部の掃除やメンテナンスを怠ると、衛生面で問題が起きやすいので注意が必要です。
タンブルチラーの最大の特徴は、内部で回転運動を加えながら食品を冷やす点にあります。ドラムや容器自体が回転したり、撹拌装置で食品を動かし続けることで、表面温度と内部温度に大きな差を生じにくくし、ムラの少ない冷却を可能にします。
食品が攪拌されることで、表面だけが過度に冷やされて硬くなるのを防ぎ、全体を均一に冷却できるのがタンブルチラーの魅力です。特に鶏肉や豚肉など、均質なテクスチャーが求められる肉製品の冷却に適しています。また、適度に食品同士が擦れ合うことで、余計な水分が取り除かれたり、解凍工程を兼ねる用途にも利用されています。
タンブルチラーは、食品を回転させながらマリネ液などを行き渡らせたい場合にも用いられます。熟成や風味の均一化を図る工程を同時に進められるため、ただ冷やすだけでなく品質を向上させる手段としても注目されています。
ドラムが回転する機構を持つため、どうしても可動部が多くなります。そのぶん、磨耗や故障のリスクも高まりやすいので、定期的な点検と部品交換の計画は欠かせません。また、機器自体のサイズや重量が大きいものもあるため、導入スペースや設置工事についても事前に十分な検証が必要です。
ブラストチラーは強力な冷風を食品に当てる方式を採用し、温度を短時間で急降下させるのが得意です。それに対して、タンブルチラーは食品を回転させながら冷却を進めるので、やや穏やかに見えるかもしれませんが、食品全体の温度を効率よく均一化できる点が優れています。
急速冷却機は調理後のスープや煮物などを即座に冷やし、安全性と風味を保ちたいレストランや給食センターなどで広く使われています。一方、タンブルチラーは肉類や魚介類などのむらなく温度管理したい素材に向いており、食品加工場や製造ラインでの利用が多いです。どのような食材をどの程度の速度で冷却したいかによって、適切な機器を選ぶのがポイントです。
急速冷却機(ブラストチラー)とタンブルチラーにはそれぞれ一長一短があります。
まず、どのような食材をメインに扱うかを整理し、適切な冷却方式を検討することが重要です。たとえば加熱後のカレーやシチューのように、とにかく素早く冷やす必要があるのであれば、ブラストチラーが最適でしょう。一方、肉の解凍やマリネ工程を含めた均一な温度管理に力を入れたいなら、タンブルチラーを導入する価値が高いでしょう。
急速冷却機(ブラストチラー)は高出力の冷却ユニットを搭載しがちで、初期コストだけでなく電気代の負担も大きくなりやすいです。一方、タンブルチラーは可動部分のメンテナンス費用がかさむおそれがあります。どちらの機器も導入前には投資対効果を見極め、長期的な運用コストを試算することが賢明です。
冷却中の食品を扱う機器なので、衛生管理は何よりも優先すべき課題です。ブラストチラーはファンやダクト、内部の壁面など、清掃すべきポイントが多岐にわたる場合があります。タンブルチラーは回転ドラムや撹拌装置の取り外し・洗浄が必要になることがあるため、現場の導線や洗浄設備も含めた検討が求められます。
実際の厨房や工場の動線を考慮し、どの場所に機器を置けばスムーズに作業できるかを把握することも大切です。ブラストチラーの付近に加熱調理器具が集約されていると、仕込みから冷却までの流れがシンプルになります。タンブルチラーの場合は、回転工程での安全確保や次工程への受け渡しルートも考えないと、かえって作業が複雑になる恐れがあります。
急速冷却機(ブラストチラー)とタンブルチラーは、どちらも「食品を安全かつ素早く冷やす」という共通の目的を持ちながら、冷却方法や得意分野に違いが見られます。 ブラストチラーは強力な冷風を用いて即座に熱を奪い、大量調理の場面などで圧倒的なスピードと効率を実現します。 タンブルチラーは食品を回転させながら冷却するため、表面と内部の温度むらを極力小さくし、均一かつ丁寧な温度管理を行うのに適しています。
導入を検討される際には、自社または自施設の扱う食品の種類や、調理から保存までのフローを再確認することが肝心です。 さらに、設備そのものの導入コストやメンテナンス、清掃のしやすさを含めた総合的な検討を行うことで、より適切な機器を選べるでしょう。 食品衛生の観点からも、急速冷却が可能な設備を導入することで細菌の増殖リスクを大幅に減らし、安全で高品質な食事や製品を提供する土台が整います。
もし大量調理を行い、短い時間で多くのメニューを安全に冷やす必要がある場合は、急速冷却機(ブラストチラー)の導入がよい選択肢となるでしょう。 一方で、肉類や海産物の解凍やマリネ工程など、工程内で「まんべんなく」温度や味を行き渡らせる必要があるならば、タンブルチラーが活躍する場面が増えるでしょう。 最終的には、目指す品質や安全性と照らし合わせながら、オペレーション全体を最適化できる方法を選ぶことが、現場にとって大きな価値をもたらします。
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製品名 | 3Dフリーザー (KOGASUN(旧:古賀産業)) |
プロトン凍結 (菱豊フリーズシステムズ) |
トンネルフリーザー (タカハシガリレイ) |
リジョイスフリーザー (米田工機) |
凍眠 (テクニカン) |
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問い合わせ先 |
![]() 引用元HP:KOGASUN(旧:古賀産業) 公式 |
![]() 引用元HP:菱豊フリーズシステムズ 公式 |
![]() 引用元HP:タカハシガリレイ 公式 |
![]() 引用元HP:米田工機 公式 |
![]() 引用元HP:テクニカン 公式 |
冷凍能力 | 8~500㎏/1時間 | 3~300kg/1時間 | ※WEB上に情報なし | 1.5~100㎏/1時間 | 15~650kg/1時間 |
導入事例 | 41件 | 10件 | 17件 | 28件 | 22件 |
設立 | 1969年 | 1999年 | 1960年 | 1973年 | 1988年 |
事例ありの 冷凍可能な食材 |
魚・魚加工/肉・肉加工/菓子/惣菜/パン/麺 | 魚・魚加工/肉・肉加工/惣菜 | 魚・魚加工/肉・肉加工/パン | 魚・魚加工/肉・肉加工/惣菜/麺 | 魚・魚加工/肉・肉加工/惣菜/麺 |
選定基準:2024年11月12日時点Google検索で100位まで検索した急速冷凍機26社のうち導入事例が多いメーカー5社をピックアップしました。