食品の長期保存や品質維持に欠かせない急速冷凍技術ですが、「冷凍すれば菌は死滅するのだろうか」と疑問を抱くケースも少なくありません。こちらでは、急速冷凍と殺菌の関係性や食品工場における正しい衛生管理の基本について解説します。
あわせて、衛生リスクの低減に貢献する急速冷凍機の導入メリットや自社に合った機器の選び方も紹介しています。
結論から言うと、急速冷凍を行ったとしても、食品に付着している食中毒菌やウイルスの多くは死滅しません。細菌などの微生物は、低温環境下において死滅するのではなく、活動や増殖が一時的に停止する休眠状態に入るにとどまります。
そのため、冷凍保存していた食品を解凍して温度が上昇すると、休眠していた細菌は再び活動・増殖を始めてしまいます。※なお、アニサキスなどの寄生虫は一定条件の冷凍(-20℃で24時間以上など)で死滅しますが、細菌やウイルスとは扱いが異なりますのでご留意ください。
食品衛生において、「殺菌」と「静菌」は明確に区別されます。急速冷凍は、温度を下げることで菌の増殖を止める静菌を目的とした処理にあたります。
家庭用冷凍庫と業務用の急速冷凍機は、どちらも「菌を死滅させる効果(殺菌効果)はない」という点では共通しています。両者の決定的な違いは、食品を凍らせるまでのスピード(冷却能力)にあります。
家庭用冷凍庫のような緩慢冷凍(時間をかけて凍らせる方法)では、食品内の水分が凍る過程で氷の結晶が大きく成長し、細胞膜を破壊してしまいます。その結果、解凍時に旨み成分や水分がドリップとして流出し、品質が低下します。一方、業務用の急速冷凍機は、細胞破壊が起こる前に素早く凍結を完了できるため、食品本来の品質を保ったまま保存することが可能です。
前述の通り、冷凍処理そのものに殺菌効果はないため、食中毒を防ぐには事前の加熱工程で菌を死滅させることが基本となります。厚生労働省の「大量調理施設衛生管理マニュアル」によると、加熱調理食品は中心部を「75℃で1分間以上」加熱することが求められます。さらに、ノロウイルス汚染の恐れがある二枚貝などの食品については、「85〜90℃で90秒間以上」の加熱が必要となります(※)。
加熱調理後や解凍時において菌を繁殖させないためには、細菌が最も活発に増殖する「10℃〜60℃」の危険温度帯をいかに短時間で通過させるかが非常に重要です。例えば、冷凍品を常温で自然解凍した場合、表面から徐々に温度が上がり、長期間にわたって危険温度帯にとどまるため、食中毒菌が急激に増殖するリスクを伴います。目に見えない微生物の増殖を防ぐには、冷却・解凍工程における徹底した温度管理が不可欠です。
通常の冷凍設備や自然放冷では、食品の中心部まで冷え切るのに長時間を要し、その間に危険温度帯(10℃〜60℃)を通過するため、菌が増殖するリスクが高まります。これに対し、強力な冷却能力を持つ業務用の急速冷凍機(粗熱取り対応機種など)を導入すれば、危険温度帯を瞬時に突破させることが可能です。冷却時のタイムラグを削ることで、衛生面におけるリスクを大幅に低減できます。
食品の凍結時には、マイナス1℃からマイナス5℃までの最大氷結晶生成温度帯を通過する時間が長いほど氷の結晶が肥大化し、細胞壁を破壊します。急速冷凍機はこの温度帯を約30分以内で通過できるため、氷結晶を微細な状態に留めることが可能です。細胞組織を傷つけずに凍結できるため、解凍時における旨み成分(ドリップ)の流出を抑制し、高い品質を保持します。
急速冷凍技術を活用すれば、味や鮮度を落とすことなく長期間のストックが可能になります。これにより、閑散期に計画的な生産(作り置き)を行い、需要のピーク時に合わせて出荷するといった柔軟な生産体制を構築できます。現場の稼働率を平準化し、残業代の削減や生産性の向上につながるでしょう。
さらに、過剰生産による廃棄や賞味期限切れに伴う処分を未然に防ぐことができるため、企業としての食品ロス(フードロス)削減にも大きく貢献します。
急速冷凍機には複数の冷却方式が存在し、それぞれ得意とする食材や用途が異なります。導入にあたっては、自社が扱う食材の特性とパッケージとの相性を見極めることが重要です。以下に代表的な冷却方式を解説します。
庫内の一方向から強い風を当てるのではなく、高湿度の冷気を多方向から包み込むように当てて凍結させる方式です。食品表面からの水分蒸発(乾燥)を防ぎながらムラなく冷却できるのが特徴です。惣菜、弁当、パン、ケーキ類など、形が崩れやすく乾燥を嫌う食品やパック詰めされていない状態での凍結に適しています。
マイナス30〜40℃の強力な冷風を高速で対象物に吹き付ける方式です。短時間で大量の食品を一気に凍結させる能力に長けており、コンベアと組み合わせたトンネルフリーザーなどで広く採用されています。加熱調理直後の粗熱取りから急速凍結までを連続的に処理したい大規模な加工ラインに向いています。
マイナス30℃前後に冷却したアルコールなどの液体(ブライン)に、真空パックした食品を浸漬させて凍らせる方式です。空気よりも熱伝導率が圧倒的に高い液体の特性を利用するため、極めて速いスピードで凍結できます。氷結晶の成長を最小限に抑えられるため、ドリップを極端に嫌う精肉や魚介類、スープ類などに適していますが、完全密閉(真空パック等)の工程が必須となります。
カタログ上のスペックだけで判断するのではなく、実際に自社で扱う食材を候補機器で凍結させ、解凍後の品質を確認するプロセスが不可欠です。ドリップの量、食感、風味、色合いの変化などを、実食を伴う官能評価によって多角的に比較・検証することが求められます。
機器の導入後、現場のスタッフが滞りなく作業できるかを判断するため、オペレーションのシミュレーションも重要です。食品の出し入れやパレットへの積み込み、機器の清掃・メンテナンスといった一連の作業動線を確認し、現場の負担が増加しないかを事前にチェックしておく必要があります。
選定する冷却方式によって、適した包装材やパッケージ形状は異なります。例えば、真空パックが必須の液体凍結式に対し、冷気を直接当てるエアブラスト式では包装が分厚いと冷却効率が低下します。「採用予定の包装素材が凍結スピードに悪影響を与えないか」「凍結によるパッケージの変形・破損がないか」を、テスト段階で確実に検証しておくことが大切です。
急速冷凍処理そのものに殺菌効果はありませんが、菌の増殖を抑える静菌効果により、食品を安全かつ高品質な状態で長期間ストックするための強力なツールとなります。食中毒リスクを排除するためには、事前の加熱による殺菌と、急速冷凍による危険温度帯の素早い突破を組み合わせた総合的な衛生管理が欠かせません。
自社の生産ラインに急速冷凍機を導入する際は、カタログの数値だけでなく、各メーカーが提供しているテストキッチンでの凍結テスト(デモンストレーション)を活用し、実際の仕上がりやオペレーションの適合性を十分に確認したうえで比較検討を進めることが成功の鍵となります。
以下のページでは急速冷凍機メーカーを詳しくご紹介していますので、あわせて参考にご覧ください。
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| 製品名 | 3Dフリーザー (KOGASUN(旧:古賀産業)) |
プロトン凍結 (菱豊フリーズシステムズ) |
トンネルフリーザー (タカハシガリレイ) |
リジョイスフリーザー (米田工機) |
凍眠 (テクニカン) |
|---|---|---|---|---|---|
| 問い合わせ先 |
![]() 引用元HP:KOGASUN(旧:古賀産業) 公式 |
引用元HP:菱豊フリーズシステムズ 公式 |
引用元HP:タカハシガリレイ 公式 |
![]() 引用元HP:米田工機 公式 |
引用元HP:テクニカン 公式 |
| 冷凍能力 | 8~500㎏/1時間 | 3~300kg/1時間 | ※WEB上に情報なし | 1.5~100㎏/1時間 | 15~650kg/1時間 |
| 導入事例 | 41件 | 10件 | 17件 | 28件 | 22件 |
| 設立 | 1969年 | 1999年 | 1960年 | 1973年 | 1988年 |
| 事例ありの 冷凍可能な食材 |
魚・魚加工/肉・肉加工/菓子/惣菜/パン/麺 | 魚・魚加工/肉・肉加工/惣菜 | 魚・魚加工/肉・肉加工/パン | 魚・魚加工/肉・肉加工/惣菜/麺 | 魚・魚加工/肉・肉加工/惣菜/麺 |
選定基準:2024年11月12日時点Google検索で100位まで検索した急速冷凍機26社のうち導入事例が多いメーカー5社をピックアップしました。