急速冷却機として一般的に知られているブラストチラーと、真空冷却機は、いずれも食品を短時間で冷却して品質を守るために用いられる装置です。どちらも「いかに素早く温度を下げるか」という観点では共通していますが、その仕組みや得意分野は大きく異なります。本記事では、それぞれの原理や利用シーンをわかりやすくまとめました。
ブラストチラーは、内部に強力な送風ファンを備え、冷却した空気を勢いよく循環させることで食品の温度を急速に下げる機械です。例えば、加熱したばかりの料理を素早く冷却することで、食品衛生上問題となりやすい細菌の増殖温度帯を短時間で通過させます。これにより、食中毒リスクを抑えながら、品質や風味を保つのに役立ちます。
ブラストチラー最大の特長は、強力な対流を用いて食品の表面だけでなく内部まで素早く冷ます点です。一般的な冷蔵設備と違い、庫内で冷気が偏らないよう大きなファンが常に冷風を循環させています。そのため、大きな塊肉やパスタソースのように熱量の大きい食品でも中心部までむらなく冷却できるのです。
食品を急激に冷やすと、中と外の温度差で組織がダメージを受ける恐れがあります。近年のブラストチラーには、風量を段階的に調整したり、設定温度を緩やかに下げるモードがあったりと、熱応力をできるだけ抑える工夫が施されています。これにより、調理後に急速冷却しても、再加熱時の食感や味わいが損なわれにくいのがメリットです。
真空冷却機は、食品を減圧環境に置き、水分を素早く蒸発させることで熱を奪い、短時間で冷却する装置です。気圧が下がると水の沸点が低くなるため、常温付近でも食品の水分が蒸発しやすくなります。その気化熱を利用して、食品自体の温度を一気に下げるのが真空冷却の根幹となるしくみです。
真空環境では酸素濃度が著しく低いため、食品の酸化反応が抑えられます。特に、収穫したての野菜や花などは高温に弱く、すぐに萎れたり変色したりすることがありますが、真空冷却を導入すれば、鮮度を保ったまま流通や保管がしやすくなります。また、冷却時間が短いほど、野菜や果物が持つ本来の色やシャキシャキ感を保ちやすい点も魅力です。
ただし、真空冷却では水分の蒸発が進むため、食品重量が減少することや表面にシワができる可能性があります。そこで、冷却時間や真空度を厳密に管理しすぎるとコストも上がるため、現場では試行錯誤しながら最適な運用ルールを定める必要があります。また、水分ロスを補うために、前処理として短時間の浸漬を行うなどの工夫も見られます。
ブラストチラーは主に加熱処理後の食品に向き、レストランやホテルの厨房、食品工場など幅広い現場で重宝されています。たとえば、加熱した料理や加工食品を素早く冷却することで衛生管理を高めるだけでなく、効率的に食材を再利用できる点が評価されています。一方、真空冷却機は野菜・果物・花など、生の状態で鮮度を保ちたいものに適しています。収穫直後に真空冷却することで、流通過程でも高品質な状態をキープできるのが利点です。
機器構成がシンプルなブラストチラーは、初期投資やメンテナンスコストが比較的抑えやすいと言われています。主なパーツは冷却ユニットとファンなので、定期的に清掃や点検を行えば長く使用可能です。一方、真空冷却機は真空ポンプや気密性の高いチャンバーが必要で、内部構造が複雑になりがちです。そのため、装置価格も高額で、日々の点検を怠ると性能低下に直結しやすい点に留意が要ります。
大規模な厨房では、複数のブラストチラーを稼働させて同時に様々なメニューを冷却する場合もあります。導入時は、必要な処理量と庫内寸法、電力消費などを十分に検討しましょう。メンテナンスはフィルターやファンの掃除、冷媒系統の点検が中心です。
真空冷却機を導入する際は、スペースの確保に加え、装置の大きさや排気システムの設置が課題になります。真空ポンプの能力やチャンバーの大きさによって処理能力が変わるため、取り扱う食品の量やサイズに合わせた選定が不可欠です。一般的にメンテナンス契約を結び、定期的に専門業者の点検を受けながら運用するのが望ましいでしょう。
急速冷却は食品の品質保持に大きく寄与しますが、一方で急激な温度変化による物理的・化学的影響を考慮しなければなりません。ブラストチラーの場合は強い送風により表面が乾燥しすぎないよう、湿度管理や時間管理に注意が必要です。真空冷却では食品からの水分蒸発が加速されるため、色や形状への影響を見極めつつ、必要に応じて吸水処理や包装方法の工夫を行うことが大切です。
どちらの機器も、食品に合わせた冷却プロセスを適切に設計することで、その真価を発揮します。例えば、急速冷却を行う目安としては、加熱後の食品を90分以内に10℃以下まで下げるなどの衛生基準があり、それを確実に守るために温度センサーやタイマーを正しく運用する必要があります。逆にオーバークール(冷やしすぎ)になると食感を損ねる恐れもあるため、適切な制御が欠かせません。
急速冷却技術は食品業界で年々注目が高まっています。最近では、IoTを活用して庫内の温度や湿度をリアルタイムにモニタリングしたり、過去の冷却データを分析するシステムが増えています。将来的には、ブラストチラーと真空冷却機の長所を組み合わせたハイブリッド装置や、更なる省エネ化を狙った新技術の開発も見込まれるでしょう。食品の安全性と品質向上を求めるニーズが高まるにつれ、これらの装置はますます重要な存在になるはずです。
急速冷却機(ブラストチラー)と真空冷却機はいずれも「短時間で食品の温度を下げる」ための機器ですが、原理や得意とする食品は異なります。加熱済み食品の衛生管理や大量調理の効率化を狙うならブラストチラー、生鮮食品の鮮度保持や酸化防止を重視するなら真空冷却機といった選択が一般的です。どちらを導入するにしても、設備コストと運用の難易度を事前によく把握し、自社の用途や規模に合った機種を選ぶことが成功のカギとなります。正しく使いこなせば、衛生面の強化と品質向上、さらにはロス削減にもつながるため、食品ビジネス全般において非常に有用な技術と言えるでしょう。
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製品名 | 3Dフリーザー (KOGASUN(旧:古賀産業)) |
プロトン凍結 (菱豊フリーズシステムズ) |
トンネルフリーザー (タカハシガリレイ) |
リジョイスフリーザー (米田工機) |
凍眠 (テクニカン) |
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問い合わせ先 |
![]() 引用元HP:KOGASUN(旧:古賀産業) 公式 |
![]() 引用元HP:菱豊フリーズシステムズ 公式 |
![]() 引用元HP:タカハシガリレイ 公式 |
![]() 引用元HP:米田工機 公式 |
![]() 引用元HP:テクニカン 公式 |
冷凍能力 | 8~500㎏/1時間 | 3~300kg/1時間 | ※WEB上に情報なし | 1.5~100㎏/1時間 | 15~650kg/1時間 |
導入事例 | 41件 | 10件 | 17件 | 28件 | 22件 |
設立 | 1969年 | 1999年 | 1960年 | 1973年 | 1988年 |
事例ありの 冷凍可能な食材 |
魚・魚加工/肉・肉加工/菓子/惣菜/パン/麺 | 魚・魚加工/肉・肉加工/惣菜 | 魚・魚加工/肉・肉加工/パン | 魚・魚加工/肉・肉加工/惣菜/麺 | 魚・魚加工/肉・肉加工/惣菜/麺 |
選定基準:2024年11月12日時点Google検索で100位まで検索した急速冷凍機26社のうち導入事例が多いメーカー5社をピックアップしました。